horumo’s blog

心理学・心理術の世界

<小話>ビュリダンのロバ

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目標を掲げ、それに邁進することはもちろんよいことですが、一度に多くのことを成し遂げようというのは、ちょっと虫のいい話かもしれません

 

 

<目次>

 

 

ビュリダンのロバ

 

ビュリダンのロバという話を紹介します。

 

力学の基礎を築いたことで知られる哲学者のビュリダンは意志は理性が良いと認めない限り決定出来ないとしていました。

 

これに反論するために、ビュリダンのような考えを持つロバは以下のようになってしまいます。

 

ビュリダンのロバは、干し草がたっぷり入った桶と水が入ったバケツとの間に立ち尽くし、干し草か水かを選ぼうと、左右を何度も見ていた。

結局どちらも選ぶことは出来ず、空腹と水分不足で餓死してしまった。

 

 

あくまでもこれは例え話ですが、理性ではどちらの干し草も同じであり優劣を決められないからこのような結果になってしまいます。

 

これは割と知られた話だが出典が明らかでないことでも有名です。

 
しかし、この話には矛盾があります。
 
もしロバが理性的な判断を下したならばどちらとも食するだろうからです。
 
そうすると意志は理性により決定されたことになります。
 
左右に等価な食事を置かれた時にどちらも選べずに餓死にしてしまうのは愚かさのせいだと言えます。
 
一般的に、ロバとは愚か者の比喩で使われる代表的な動物とされています。
 
しかし、人生にはビュリダンのロバに似た状況が発生します。
 
それは何らかの選択を迫られた時に、どの選択肢が良いのか理性では判断がつかない時です。
 
ビュリダンのロバと違い、人生の選択では一つを選ぶともう一つは選べなくなるから悩ましいものです。
 
そのような場合はどちらも選べずに迷っていると選択する権利から失われてしまいます。
 
買うのか買わないのか、告白するのかしないのか、行動を起こすのか起こさないのか。
 
決断には時間制限があります。
 
「両方とも!」などと答えれば殆どの場合その両方とも失うことになる可能性があります。
 
そうして、多くの人はどちらが良かったのか分からない選択をした後になって、違う選択をした方が良かったのではないかと思ってしまうものです。
 
これは人が本質的に貪欲だから生じることだと考えます。
 
そんな試せないことで悩むよりも、選択した事をより良くすることに注力すべきだと私は考えます。
 
どうしようもない事で悩むのは時間と労力の無駄でしか無いのは言うまでもない。
 
 

貪欲

 
インディーズ音楽配信サービス会社「CD Baby」の創業者であるデレク・シヴァーズ氏は、「ビュリダンのロバ」を例に、次のように述べています。
 

すべてを一度にやろうとすると、実際にはどれも前進しづらい

 

 シヴァーズ氏は、1年に掲げる目標は、1つか2つにすべきと説いています。

 

また、どの目標からはじめればいいのかわからないときは、その目標の「消費期限」をベースに整理するのも一つの方法です。

 

タイミングがポイントとなる目標は早めに着手し、そうでないものは、しばらく置いておくのです。

 

人生は長い道のりです。

 

短期間で多くのことを求めるよりも、ひとつひとつの目標を着実に成し遂げ、これを積み重ねていくほうが、結果としてより多くの成果をあげられるということのようです。

 
 

ビュリダンのロバのようになりやすい人

 

何かを決定するのが苦手な優柔不断な人、つまりビュリダンのロバになりやすい人というのは、現実でも多くいます。

 

そのような人たちは、分析力や理解力に長けているとも考えられます。

 

物事の様々な面からのメリットデメリットを読み取れてしまい、決断することの難しさを人より大きく感じているのです。

 

ビュリダンのロバのような人たちは、現状を冷静に分析したり、他人の考えを推敲することは得意なのですが、自分で決断することは不得意です。

 

そのため、決断を先送りにしたり、他人に決断を任せてしまいがちです。

 

 

最後に

 

ビュリダンのロバのように、理性的で過度に合理性や損得を重視してしまう人は、結果として必要以上に「選択の壁」に悩まされることになります。

 

そうした場面で必要になるのが「自分の自由意志」です。

 

選択から逃げずに、時には直感的に自分自身でよいと思ったほうを決める、そんな自由意志が人間が何かを選択するときに非常に重要になってきます。

 

自分で決定するということは、自分自身でリスクを背負い、責任を持つということ。

 

それらを受け入れ、考える「意志の力」を備えることが、より良い選択につながるのです。